ネックとヘッド部分の木材。
ヘッド部分の加工。ペーパーがけも職人の手により行われます。
工場内を丁寧にご案内していたたきました!
2.音量と音質のせめぎ合い。驚異的な木工精度を実現。
櫻井ギター製作の現場では、常に「音量と音質」が戦っています。音量を大きくすれば音質が悪くなり、音質を良くすると音量が小さくなってしまいます。音量、音質の両方を兼ね備えたギターを作りたいのですが、これが難しい。どちらかに寄ってしまうのです。今も、ある演奏家の方より「来年の1月に協奏曲を演奏するからもっと音の大きなギターを作って欲しい」というオーダーがあります。オーケストラをバックに演奏するため、マイク、スピーカーを使わなければ当然ギターの音が埋もれてしまうのですが、楽器として大きな音を出したい気持ちは理解できます。ある意味で実験ですよね。
また、ギター製作において、それぞれの工程が大切ですが、その中でも一番大切なのは表面板です。表面板から80%以上の音が出ているので、裏と横はあまり関係ないのです(笑)。
ネックとヘッド部分の木材。
君島音以外の面で、工作精度を出すという意味では「温湿度管理」が重要です。木は湿気を吸ったり吐いたりする中で、大きさが変わってしまいます。つまり、同じ条件下で加工しなければ精度の高いギターは生まれません。河野ギターでは加工の精度を上げるため、この条件を整えながらギター製作を行っております。
櫻井河野ギターでは、100分の5ミリ、つまり、0.05ミリを「制作誤差の範疇」とする厳しい基準を設けております。これは驚異的な精度であり、木工業として、世界一の精度を持っていると言えます。これは、先ほど君島が話したように、温湿度をしっかりと調整しなければ実現できません。例えば、今日のような晴れの日で、湿度が25%だとすれば、木材は縮んでしまいます。逆に雨の日となれば膨らんでしまうのです。このような状況下であれば、誤差の範疇が広がりますよね?つまり、この条件では100分の5ミリという精度は出せません。木の伸縮をなるべく少なくする為には、低温低湿に保つことが重要です。
また、売り出されたギターは温湿度の面で過酷な環境に置かれます。これに耐えられるよう、一定期間、湿度や温度に木材を慣らします。日本はこの点において、四季があるため有利なのです。四季によって木材は伸縮しますが、10年もこれを繰り返すと伸縮が少なくなってゆくのです。量産される楽器はこの期間が短い。例えば月に1万本も製作するようなメーカーでは、10年も木材を寝かせておけませんよね。私達のような小規模精鋭な会社でしか実現できないのです。逆に、量産楽器メーカーがどうしているかと言えば、乾燥炉を使い人口乾燥させています。
ヘッド部分の加工。ペーパーがけも職人の手により行われます。
君島木に四季を経験させることで「良くない木材」をはじき出し「良い木材」だけを利用できるのが自然乾燥の強みです。人口乾燥の、一定の環境下で湿度をコントロールすると、材の性質が出てこないのですね。
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