入間でひとと会う
子どもたちに映画の魅力を、
夢を追いかけることの大切さを知って欲しい。
この企画が立ち上がったのは去年の5月頃です。入間市側から「市を中心とした文化的な事業を何か企画できないか」とご相談いただき、今回のプロジェクトメンバーが集まりました。そこで僕が「入間市を舞台にしたご当地映画を撮らせて欲しい」と提案したところ、皆さん満場一致で賛成してくれたのです。そんな経緯で企画がはじまったのですが、「どんな映画を撮ればいいんだろう」と考えた時、ふとよみがえったのが少年時代の思い出でした。というのも僕自身が入間市出身で、幼い頃から入間の山や川など自然を駆け巡って育ってきたんですね。そういった郷愁的な部分を舞台にした子どもが主役の映画をつくりたいというのがこの作品の着想になります。
茶畑のなかで撮影中の一同
阿久津慶人さんに指示を出す宮岡監督
撮影に使われた仏子小学校の教室
教室シーンを撮影中の宮岡監督
入間市には、都市的な生活利便性を備えた住宅街だけでなく、山や川をはじめとする豊かな自然があり、旧石川製糸西洋館のような文化施設もあり、何よりも広大な茶畑があります。シナリオの段階から「この茶畑をドローンで撮ったらすごく幻想的な絵になるだろうな」と考えていました。そういったイメージも映画のなかでうまく実現できて、入間市の魅力を引き出せたかと思います。
またご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、実は入間市は色々な文化人にゆかりがあるんですね。漫画家の松井優征先生(代表作『暗殺教室』『魔人探偵脳噛ネウロ』)、麻生周一先生(代表作『ぼくのわたしの勇者学』『斉木楠雄のψ難』)、作詞作曲家の杉山勝彦さんは入間市出身です。さらにアニメ『ONE
PIECE』(ニコ・ロビン役)や『新世紀エヴァンゲリオン』(赤城リツ子役)などの声優としてご活躍されている山口由里子さんも入間市在住です。入間市の多様な側面、つまり自然の豊かさや独自の文化が、文化的な精神を育むのに少なからず影響しているのではないかと個人的には感じているのです。今回、自主映画の制作に没頭する子どもたちを題材に選んだのも、そういった部分が影響しているかもしれません。
旧石川製糸西洋館(外観)
旧石川製糸西洋館(内観)
幻想的な入間の茶畑
三輪神社で撮影中、台本を確認する宮岡監督
一人でも多くの子どもたちに「仲間と夢を追いかけることの大切さ」を伝えたいと思っています。まさに今現在、現実にコロナ禍という活動制限や社会的な抑圧があるなかで、自分たちが本当にやりたいことを夢中で追求する大切さを知って欲しいのです。僕自身も色々な冒険をして、色々な大人に迷惑を掛けながら育ってきました。それでも寛容な大人や大切な仲間たちがまわりにいたお陰で、今もこうして好きな仕事が出来ています。もちろん大人は、子どもを世の中の危険や不安から守りたい。ただこの想いが強すぎるばかりに、最近は過保護になりすぎているように感じている部分もあります。「映画監督になりたい」「アイドルになりたい」という子どもの大きな夢を否定するのではなく、そういった自由な発想や冒険心を育んで欲しいと願っています。そういう意味では、子どもたちだけではなく親世代やお年寄りの方々にもこの作品を観ていただきたいですね。なので『ラストサマーウォーズ』は、子どもだけでなく老若男女問わず楽しめるエンターテインメントを意識して制作しました。
劇中シーン。元気よく走る子どもたち
劇中シーン。衣装用の古着を集める子どもたち。
井上小百合さんが演じているような「子どもと同じ目線で真剣に向かい合える先生」は、現実にもいると思います。僕自身、小学六年生の頃から中学二年生まで毎日のように映画を観ていたのですが、周りには「もっと勉強しなさい」「習い事をしなさい」と言う方が多くいました。ただ、そんな中で温かく見守ってくれるような先生も確かにいました。そのような個人的な経験が意識の根底に残っていて、彼女のキャラクターへ投影されているのかもしれませんね。
井上小百合さんのお芝居はとても素敵でした。アイドルグループ乃木坂46を卒業されてからの2年間、シス・カンパニーに所属して色々な舞台を経験し、色々な役者たちと演技を磨いてきているんだなあと強く感じましたね。撮影の合間にも子役の方々と仲良く遊んでいて、笑顔がとてもやさしい方でした。
井上小百合さん(右)、飯尾夢奏さん(左)
子どもと同じ目線で話す土方先生。
僕自身の監督としての取り組みでは、とにかく「楽しくやろう」と明るい雰囲気づくりを心掛けましたね。大人の方々は皆さん経験豊富で、ほとんど僕から指導するようなことはないまま、それぞれが完璧に演じてくれました。子役の方々に関しても、「ここはこうするんだよ」「表情はこうだよ」と実演して見せたらすぐに飲み込み、一発で演じてくれましたね。全国から300名ほど参加いただいたオーディションのなかから選んだ方々なので、キャラクターが個性にぴったりマッチしていたし、協調性も高かったです。そして何よりも、元気がありましたね。最高のキャスティングが出来たと思っています。
インスタントカメラで遊ぶ撮影合間の阿久津慶人さん
大人も子どもも楽しそうな撮影風景
撮影が進むにつれてキャストの皆さんがどんどん仲良くなっていくのが楽しかったです。後半になると、グループで撮影している時には誰かが台詞を間違えても声を掛け合い、お互いにリカバリーしている光景もありましたね。すばらしいことだと思います。実はヒロインの飯尾夢奏さんと、ムードメーカーの小山春朋さんをのぞく四名はみんな小学五年生で、二人とは年齢が違うんですね。そんな中でも学年の違いを感じさせない仲の良さが印象的でした。
また、長妻怜央さんがご自身の撮影が無いシーンでも現場に来られて、子役の方々とコミュニケーションを取っていたのも深く印象に残りました。広場で撮影している時には昆虫採集をして遊んでいましたし、主人公の家のシーンでも、カメラが回っていない時は阿久津慶人さんと一緒にずっとパソコンゲームで盛り上がっていました(笑)。人柄の良さが行動や表情に溢れでていましたね。
子どもたちと遊ぶ長妻怜央さん
微笑ましい光景
劇中では数多くの有名監督や作品の名前が出てきます。スティーヴン・スピルバーグをはじめ、アルフレッド・ヒッチコック、スタンリー・キューブリック、ブライアン・デ・パルマ、マーティン・スコセッシなど…。このチョイスは完全に僕自身の好みです(笑)。なかには「今の子どもには分からない」と周囲から反対を受けた作品もありましたが、そこは譲れませんでした。例えば井上小百合さん演じる土方先生の台詞でスピルバーグ監督の『激突!(1971年)』が出てくるのですが、この作品は僕自身が小学六年生の頃にたまたまBS放送で観て、映画の世界にハマるきっかけになった作品なんですね。そこからハラハラさせられる恐怖演出に魅入られ、サスペンス映画やホラー映画へとのめり込んでいきました。本作にはこういった過去の名作を今の子どもたちにも知ってもらい、少しでも興味を持って欲しいという裏のテーマもあるのです。特にスピルバーグ監督は、エンターテインメントを目指す作家なら誰もが影響を受けているといっても過言ではないほどすごい力を持った監督だと思います。
何よりもまず、多くの子どもたちに観てもらって、映画の魅力にも触れて欲しいし、夢を追いかけることの大切さも知って欲しいと思っています。今は子ども向けの映画というとアニメーションばかりで、実写映画がほとんどなくなってしまっている。それがすごく寂しいのです。そういう意味では、『ラストサマーウォーズ』は『ぼくらの七日間戦争(1988年)』みたいになればいいなと思っています。
また、入間市への想いで言うと、大きく分けて二つにあります。一つは茶畑や雄大な自然のあるロケーションをしっかり描くことで、都心や日本全国から入間市へ興味を持ち、観光につながって欲しいということ。もう一つは、入間市の「子どもが輝ける町」というイメージを広める手助けをしたいということです。これは僕自身が身をもって体験していることでもあります。市もスローガンにしていますが、入間市は本当にのびのびとした子育てが出来る街です。そういった想いを踏まえつつ、本作では老若男女あらゆる人が楽しめるエンターテインメント映画を目指しました。是非劇場でご覧ください。
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