3.名門と呼ばれる店で働き、天狗になっていた自分がいた

イタリアンのいわゆる「名門」と呼ばれるお店で働いてきた私ですが、当時の私は八百屋さんや農家の方に対し礼を欠く言動、行動をしていたと反省しています。形が悪い、色が悪いというだけで、気に入らない野菜を突き返していたのです。


「ピッツェリア武蔵野山居」で仕事をするようになり、地元の農家さんと直接お会いする機会が増えました。農家さんの話をたくさん聞く中で、畑に居ないときも、「台風にどう備えよう？」「雪対策はどうしよう？」「害虫や獣が出たときはどう対処しよう？」等、24時間365日、畑のことを考えていることを知りました。


ある日、実際に農家さんの畑に行くと「山積みの野菜」が目に飛び込んできました。「これは何ですか？」と尋ねると「間引き野菜だよ※」と教えてくれました。聞けば畑の半分を間引くというのです。つまり野菜の半分を使って美味しい野菜を作り、もう半分は出荷する。東京にいた頃の私は農家さんの大変な苦労も知らずに、それらを突き返していたのです。天狗になっていたと、奢っていたと、反省するばかりでした。


※間引き野菜…密生する野菜の苗から生育の悪いものを取り除いたり、株と株の間隔を確保する為に抜き取ったりすること