4.たくさんの生産者の方がいて、料理を提供することができる

これらの間引き野菜を目の前に、何とも言えない感情にとらわれていた私は「この間引き野菜を全部ください！全部買います！いくらですか？」と尋ねました。農家さんは驚いた様子で「いや（お金は）いらないよ、持っていっていいよ。その代わり美味しくしてよ」と仰っていました。
そこから先は私の仕事です。そのとき頂いたのはヤングコーンだったのですが、窯に並べ、真っ黒焦げになるまで焼いて、焦げた一番外側を剥きます。そうすると、すごく良い香りのするベビーコーンが出てくるのです。
そこに包丁を入れ、開いたら塩をふり、生ハムをのせ、バルサミコを少しかける…、この料理を気に入ってくださるお客様がたくさんいて、当時の「ピッツェリア武蔵野山居」の名物料理になったのです。

後日、お譲りくださった農家さんが「いいの？こんな格好で…」と言いながら来店してくださいました。そして間引き野菜で作った料理を食べてくださり、農家さんと一緒に喜んだのを覚えています。
間引き野菜であっても、調理方法によっては新たな可能性が生まれます。農家さんのご苦労を知れば、ごみになってしまう「半分の間引き野菜」も料理に変えたいと思うのです。